
建築やリフォームは、ただ家を直す仕事ではありません。
とくに介護リフォームでは、手すり一本、段差一つが暮らしを大きく変えます。
会社を立ち上げた直後の裏切り…資金ゼロからの再出発…そして病気による入院。
それでも、建築の現場を離れなかった人がいます。
千葉県で建築・リフォーム、そして介護リフォームを手がける「三希工房」代表の建築士・田野恵さんです。
屋根に登り、職人と一緒に現場に立ち、時には図面を引き、時にはお客様の生活を一緒に考える そんな田野さんが目指しているのは、ただ家をきれいにするリフォームではありません。
豊富な経験と他業種にわたる知識を活かし、介護用品や住環境の工夫を通して、「1分でも1秒でも笑顔で永く住み続けられる住まい」をつくること。
今回は、三希工房の立ち上げから現在までの歩み、そして「笑顔になるリフォーム」に込めた想いを伺いました。
今回はたくさんの思いの丈をお話し頂けたので二部構成でお送りします。
第一部として、三希工房の立ち上げから現在までの歩みを伺いました。
建築士・田野 恵さんの原点|家具職人の祖父と、大工さんに憧れた幼少期
編集部初めに簡単な自己紹介をお願いします。



名前は田野恵(たのめぐみ)です。出身は千葉県八街市。中学と高校までは、そこにいました。
そのあと建築デザインの専門学校に進みました。
家族は息子と娘がいて、息子は3~4年前に結婚して、今は孫が2人。娘とは一緒に住んでいます。
編集部:趣味やオフの過ごし方を教えてください。
田野さん:猫が大好きです~動物全般好きなんですけど、やっぱり猫が一番で性格も合うし、飼うのも楽だし(笑)
あと最近ハマっているのはベリーダンスとゴルフ。
それと今シーズンは、友達が誘ってくれて30年ぶりにスキー復活する予定なんです♪
昔はバイクにも乗ってたんですけどね、200キロ以上あるバイクだったので、病気で筋力が落ちてから取り回しが難しくなって…2年前に手放しました。
「建築って面白い」子どもの頃の原体験



建築の仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか?



会ったことはないんですけど、祖父が家具職人だったんです。祖父が作ったものが身近にある環境でした。
それと、昔住んでいた家に、よく夜中に車が突っ込んでくることがあって(笑)
そのたびに大工さんが修理に来るんで私はずっと大工さんにくっついて、道具や作業を見てたんです。
「これ面白いなぁ」って その時の記憶がずっと頭のどこかに残っていたんでしょうね。
高校の進路を考えるときに、資格を取って家を建てると言う夢があって「建築を勉強したい」と思いました。親には反対されたので家出して叔母に力を借りて建築デザインの専門学校に入りました。


出産・離婚を経験しても諦めなかった建築の道
建築デザインの専門学校に進学した田野さんでしたが、人生は大きく動きます。
田野さん:学校に通い始めて1年半くらいで、長男がお腹にいることが分かったのでそれで学校を辞めて母親になりました。
その後、離婚することになって「もう一回、建築の図面を描きたい」って思ったんです。
でも当時は資格がないと採用してもらえない時代だったので模索してそこでたどり着いたのが、土木図面の仕事でした。
埋め立てとか造成の図面を、測量しながら手書きで描く仕事です。
採用してくれた会社で頑張っていたら、社長に「建築士の資格を取れる学校に行け」と言って頂けて働きながら学校に通って、建築士の資格を取りました。


三希工房の立ち上げ|リフォーム現場から見えた課題
その後、建築の仕事を続ける中でリフォーム会社へ転職し、そこで田野さんは、トップ営業マンとして活躍します。
しかし、新たな想いが生まれます。
田野さん:その頃、介護保険の助成金制度が広がり始めていて、「介護リフォームをやりたい」って思ったんです。
でも会社からすると、助成金工事は20万円くらいの小さな仕事が多いので売上が下がるから、やらせてもらえなかったんです。
それで仲間と一緒に、三希工房を立ち上げました。




裏切りと病気…それでもリフォームを会社を続けた理由
しかし会社設立から2年後、予想もしない出来事が起こります。
田野さん:子宮体がんが見つかって、手術することになって私が働かないと稼ぎがないので、そのとき一緒に会社をやっていた共同経営者が、通帳もカードもお金も、全部持っていなくなりました。
ある日事務所に行ったら、事務用品まで全部なくなってた…銀行で履歴を調べたら、お金も消えてました。
裏切られたショックの方が大きかったですね。
病気、会社崩壊、それでもゼロからの再出発
入院を控える中で、会社は崩壊状態。
事務所も失い、田野さんは自宅から再スタートを決意します。
田野さん:当時は、建築事務所として使える場所もなくて、「どうしようかな…」っていう状態でした。
でも仲間が大家さんに事情を話してくれて、「事情があるならいいよ」って貸してもらえたんです。
そこから再スタート!ゼロからやり直しました。
当時は、女性が社長で建築士、しかもスタッフも全員女性の会社って全国でも、うちだけだったんですよ。
「人脈銀行」に助けられた
編集部:お金はなくなった。でも、人脈の預金残高がすごいと思いました。
田野さん:本当にありがたかったですね。
職人さんにも頭を下げて、「分割で払わせてください」ってお願いしました。
そしたら、「いいよ。働いて少しずつ返せばいいよ」って言ってくれる親方もいて車運転しながら、ずっと泣いてました。
あの時は本当に、人に助けられて今があるって思います。


「説明不足」が教えてくれたリフォームの本当の難しさ
編集部:仕事での失敗談はありますか?
田野さん:サラリーマン時代に、タイルのお風呂をユニットバスにリフォームしたことがあって。
仕上がりはきれいで、お客様も喜んでくれたんですが…
浴槽が10センチくらい小さくなるんですよ…そこを十分に説明できていなかったのでお客様が少し残念そうにしていて、自分がすごく悔しかったんです。
それからは、メーカーの説明会に行ったり、図面を徹底的に理解するようにしています。
一番大事にしているのは、「自分がここに住むならどう感じるか」と、お客様の立場で考えることですね。
お客様の考える「赤」をまず私が理解して職人達に「赤」を伝えるそれが出来ないとクレーム案件になってしまいますから。
男性社会の建築現場で戦う女性建築士
編集部:壁があっても突き進むタイプですか?
田野さん:逃げるの嫌なんですよね~
友達には「回り道すればいいじゃん」って言われるんですけど、私はぶっ壊して進むタイプ。
猪突猛進。伊之助タイプ(笑)


大工さんの「尺」とか専門用語も分からなくて、全部ノートにまとめて自作の虎の巻を作りました。
この虎の巻は今でも大事にしていて教えてくれた大工さんは引退されて今は弟子の方が継いでうちの仕事受けてくれてお世話になっています。
男社会で「どうせ知らないだろ」って思われるのが悔しくて悔しくて、だから屋根にも登るし、屋根裏にも入ります。台風のあとなんて、屋根の上で夕日を何回見たことか(笑)


介護リフォームとの出会い|家で暮らし続ける為の住環境作り
編集部:介護リフォームを始めた想いを教えてください。
田野さん:母が認知症になって施設で亡くなったんですね、でも私は人が最後を迎えるのは家だと思っている。
1秒でも長く家にいられるようにしたい。
車椅子になったら施設じゃなくて、車椅子で生活できる家にリフォームすればいいし、手すり1本で転ばなくなるなら、それだけで骨折も防げるし、家族と笑って過ごせる時間が増えるじゃないですか。
あと、市役所の知り合いから介護リフォームの助成金を悪用する会社があると聞いて正義感が沸々と…「そんな会社、払拭してやろう」って思いました(笑)
「建築×福祉×医療」三希工房という名前に込めた想い



「三希工房」という名前の由来を教えてください。



「建築」「福祉」「医療」この三つがそろえば、1分1秒でも長く家で暮らせる住環境が作れる。
その願いを込めて「三希工房」にしました。
まとめ|「田野に頼めば安心」と言われる存在へ
建築士として現場に立ち続ける田野恵さん。
裏切りや病気、資金ゼロからの再スタートを経験してもなお、現場に立ち、屋根に登り、職人と向き合い続けています。
田野さんが目指しているのは、ただ家を直すリフォームではありません。
「笑顔になるリフォーム」を通して、豊富な経験と他業種にわたる知識を活かし、シニアライフのお手伝いをすることそして何より、「1分でも1秒でも、笑顔で永く住み続けられる住環境を作りたい。」
建築・リフォーム・介護リフォーム、そして介護用品まで、住まいのことをトータルで考えながら、これからも三希工房は「田野に頼めば安心」と言われる仕事を積み重ねていきます。
※第二部では
「子ども食堂の取り組み」と「田野さんの幼少期」についてお届けします。


会社概要
| 事務所名 | 有限会社 三希工房 |
| 代表者 | 田野 恵 |
| 所在地 | 〒266-0031 千葉県千葉市緑区おゆみ野5-32-11-105 |
| 設立 | 2005年4月11日 |
| 事業内容 | 福祉リフォーム・一般リフォーム・福祉総合コンサルタント・福祉用具貸与販売・講師業 |
| 許可・資格 | 二級建築士事務所登録/二級建築士/福祉住環境コーディネーター2級 千葉市木造住宅耐震診断士/千葉県応急危険度判定士/ブロック塀診断士 シックハウス診断士補/福祉用具相談員/古民家鑑定士/既存住宅状況調査技術者 |
| 従業員数 | 2名 |
| ホームページ | http://www.miki-kb.com |
| SNS | Instagram miki.kb411 |
| 営業時間 | 9:00~18:00 休業日:日曜 |
| お問い合わせ | TEL:043-291-7422 FAX:043-292-3566 |











